十津川郷の昔話、親の谷の戎方滝(雌滝・雄滝)へ。

5月、新緑がきれいな季節になってきました。

『十津川郷昔話』に掲載の

「男滝の龍」

舞台とされる、十津川村小井の

「戎方滝雌滝・雄滝」に行ってきました。

「戎方滝雌滝・雄滝」は、

一般に、親の谷雌滝・雄滝と呼ばれています。

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"昔むかし、十津川郷小井集落では、大雨が

降り続いていました。

やがて池穴村と小井村を結んでいた親の谷に

架かる橋が流されてしまいました。

村の衆たちは、橋を新しく架け直そうとして

いたとき、

男滝さんの主という(龍)が橋を架けるのを

手伝ってくれた"

という、ありがたい話です。

 

男滝は親の谷に懸かる滝で、谷名を冠せずに、

地元では、単に「オタキ」と呼んでいるようです。

親の谷には、

「オタキ」以外にも、多くの滝が懸かっています。

話の詳細は「十津川郷昔話」を参考にしてください。

 

ちなみに、

この親の谷の「オタキ」について、

『十津川郷村誌』の「小井村村誌」には、

戎方滝という名で紹介されています。


"御矢ノ谷ノ下流ニシテ雌雄ノ両瀑アリ、

其雄瀑ノ高サ凡五丈四尺、幅八尺、

落水怒リ吼へ沫ヲ飛ハシ 

中段ニ漂ヒテ渦淵ヲナス、

深サ凡一丈、而シテ又下段ニ落ツ、

淵水概ネ上ニ均シ、

其雌瀑ハ高サ凡四丈八尺、幅五尺、

深サ八尺ニシテ懸瀑ノ形様

恰モ白布ヲ引カ如シ、

眺望共ニ頗ル佳ナリ"

と。

さて、それでは、親の谷の戎方滝に

向けてスタート。

親之谷橋横手の林道崩れを進み、

河原(親の谷)へ。

大岩を乗り越えると、

二条の10メートル滝に突き当たります。

左岸のガレ場を登って「戎方滝雌滝」へ。

『十津川郷村誌』に、

高さ凡四丈八尺(約15メートル)とあります。

再び左岸を巻き上がって、

中ほどに滝壺を持つ

二段滝の「戎方滝(雄滝)」へ。

こちらの滝の高さは、

凡五丈四尺(約16.3メートル)。

途中、腐りかけた鉄ハシゴと鎖を利用しました。

地元の方の話では、

近くに祠も祀られていたようです

(谷入口の小祠とは別。

現在はなくなっています)。

 

また昭和30年頃には、旧国道の親之谷橋から

谷沿いに観光用の遊歩道が整備されていた

とのことです。

鉄ハシゴと鎖は、その頃の残骸のようです。


『十津川郷村誌』の記述された

明治18年頃の親の谷の戎方滝は、

眺望も良く、雄滝についての

「落水怒リ吼へ沫ヲ飛ハシ、

中段ニ漂ヒテ渦淵ヲナス」は、

見事に滝を表現していると思います。

私が訪ねた時には、

まさに「沫ヲ飛ハシ」の大迫力、

高さ、幅共に、かつての様相が思い浮かぶようです。

(谷入口の小祠の不動明王は、

現在、上部の林道脇に移されています)

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[滝位置]

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[親の谷入口]

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[二条の滝]

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[古い鉄ハシゴを登る]

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[戎方滝(雌滝)]

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[戎方滝(雄滝)]
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